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RBACとは?ロールベースアクセス制御で実現する効率的なID管理とセキュリティ強化
2025年4月8日、「RBAC(ロールベースアクセス制御)とは?~退職者IDの削除漏れ、人事異動時の権限削除漏れなど、セキュリティ事故を防止~」というセミナーを開催しました。今回はその講演内容のポイントについてご紹介します。
クラウドサービスの増加とID管理の複雑化
まず、クラウドサービスの普及が企業にもたらすID管理の課題について解説します。テレワークの浸透に伴い、Microsoft365やSalesforceなど多様なSaaSを活用する企業が増えていますが、これによりアカウント管理の負担が急増しています。
近年、業務効率化やデジタル化の進展に伴い、企業で導入されるクラウドサービスは増加の一途をたどっています。Office 365やGoogleワークスペースなどのオフィススイート、Salesforceのようなビジネスツール、BOXなどのオンラインストレージ、Slackなどのビジネスチャット、Zoomなどのビデオ会議ツールなど、一社あたり20~30ものサービスを契約していることも珍しくありません。新入社員が入社する際には、これらすべてのサービスに対してアカウント登録や適切な権限設定を行わなければならず、情報システム部門の業務負担が非常に大きくなっています。
【資料:P6 しかも、入社時だけではない…(IDライフサイクル管理)
さらに、ID管理は入社時だけでなく、社員のライフサイクル全体を通して発生します。人事異動、委員会への参加・退会、昇進・降格、そして退職など、さまざまなイベントに応じて適切にアカウント情報や権限を変更・削除する必要があります。また、正社員だけでなく派遣社員や取引先のパートナー企業にもアカウントを付与するケースが増えており、管理すべきIDの数と種類はさらに増加しています。
このような状況から、ID管理業務が煩雑になり、「面倒だから全社員に一律で同じ権限を付与してしまおう」といった対応になりがちです。しかし、このようなアプローチはセキュリティリスクを高めてしまうため、効率的かつ安全なID管理の仕組みが求められています。
内部不正やサイバー脅威の高まりとRBACの必要性
次に、内部不正など、企業が直面するセキュリティ脅威とその対策について説明します。適切なアクセス権限管理が行われない場合、データ漏洩や不正アクセスのリスクが高まります。
IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威2025年版」によれば、内部不正による情報漏えいは10年連続でリスクの高い脅威として挙げられています。人事異動があったにも関わらず、前の部署の権限がそのまま残っている状態や、必要以上に広範囲の権限が付与されている状態は、内部不正のリスクを高める要因となります。
【資料:P8 対策が難しい内部不正】
権限管理が適切に行われないと、退職者のアカウントが削除されずに残ったり、人事異動時に旧部署の権限が維持されたりして、セキュリティ上の脆弱性となります。これらの脆弱性は、情報漏洩など内部不正のリスクを高める要因となります。
このような状況を防ぐには、「誰がどのシステムにアクセスできるか」を適切に管理する必要がありますが、個別の権限を一つひとつ設定していくのは膨大な作業となります。そこで注目されているのが、RBAC(ロールベースアクセス制御)という考え方です。
RBACとは?ロールベースアクセス制御の仕組みとメリット
最後に、RBAC(ロールベースアクセス制御)の基本的な仕組みとそのメリットについて詳しく解説します。ロール単位で権限を管理することで、効率的かつ安全なID管理を実現できます。
【資料:P10 RBACとは?】
RBACとは、各ユーザーに対して個別に権限を付与するのではなく、「ロール(役割)」というグループ化された権限セットを定義し、そのロールをユーザーに割り当てる方式です。例えば、「マーケティングロール」を定義し、マーケティング担当者にはそのロールを付与することで、マーケティング業務に必要なシステムやデータへのアクセス権限を一括して設定できます。
人事異動でマーケティング部門から営業部門に異動した場合は、マーケティングロールを削除して営業ロールを付与するだけで、権限の変更が完了します。このように、ロール単位で権限を管理することで、ID管理の効率化と人為的ミスの削減が可能になります。
この考え方自体はシンプルであり、多くのシステムでもロールやグループという概念は提供されていますが、実際の運用にはいくつかの課題があります。例えば、ロールの数が増えすぎてしまうことや、異なるシステムごとにロールを設定する必要があることなどです。
こうした課題を解決するためのツールとして、「Keyspider」を紹介します。Keyspiderは人事システムなどから人事異動や入退社のデータを自動的に取り込み、事前に設定したルールに従ってロールの付与・削除を自動化します。これにより、複数のSaaSやオンプレミスシステムを横断した一元的な権限管理が可能になります。
【資料:P13 権限管理業務イメージ】
Keyspiderを活用することで、ロールの定義や割り当てルールを画面上で視覚的に設定できます。例えば、「営業部に所属し、役職が課長以上であれば営業管理職ロールを付与する」といったルールを設定することで、人事発令情報に基づいて自動的に適切な権限が付与・削除されます。
【資料:P15 ロール割当の自動化】
Keyspiderの特徴として、日本企業の人事制度に合わせた機能が挙げられます。組織階層構造(本部以下の部署など)に対応した権限設定や、人事発令日に合わせた権限変更の予約などが可能で、海外製品では対応しにくい日本特有の人事管理に適しています。
このようなRBACツールの利用によって、ID管理の効率化だけでなく、セキュリティの強化も実現できます。「最小権限の原則」に基づき、必要最小限の権限のみを付与することでセキュリティリスクを軽減できます。
まとめ:RBACツールで実現する効率的なID管理
以上を踏まえ、RBACを活用したID管理の重要性とその実践方法についてまとめます。適切なRBACツールの導入により、企業はセキュリティと効率性を両立した運用を実現できます。
クラウドサービスの増加に伴い、ID管理の負担は増大する一方です。個別の権限設定による管理は限界があり、内部不正のリスクも高まっています。RBACを導入することで、管理の効率化と権限の適正化が同時に実現できます。
RBACを実現するにはKeyspiderがおすすめです。
最新の導入事例として、野村不動産ホールディングス株式会社でのKeyspider導入を紹介しました。人事異動に伴う権限の自動更新によりセキュリティリスクを低減し、効率的なID管理を実現している事例です。
また、セミナーではID管理の発展形として、IDガバナンス&管理(IGA)機能についても触れました。従来のID管理に加えて、操作ログの記録や権限の棚卸し機能など、ガバナンス的な要素を備えた製品が注目されています。Keyspiderもこれに対応しています。
RBACの導入は、単なるID管理の効率化だけでなく、内部統制やセキュリティ強化、コンプライアンス対応としても重要な施策です。クラウドサービスの活用が進む現代の企業において、RBAC中心の考え方で最適なツールを選定し、効率的かつ安全なID管理体制を整えることが求められています。